デジタルメモリーボックス
センタービル
2F 応接室(和室) C202
デジタルメモリーボックスは、SNS中心の現代の記録メディアとは異なる新しいアプローチを提示する。このプロジェクトでは、写真や映像で捉えきれない物質の質感や光の情景を表現するためにミニチュアやジオラマを活用する。これらの情景模型は、日常のささいな瞬間や感情を物理的な形で捉え、視覚的な魅力と共に個人的な記憶を物質化する。デジタルメモリーボックスは、個々人の記憶や体験を形にし、物質的なメディアとして手元に残すことで、忘れられがちな日常の一コマを永続的に保存する試みである。このようにして、デジタルメモリーボックスは、個人の記憶を新たな形で捉え、保存するための革新的な手段を提供する。
修士2年
浅尾 楽 ASAO Raku
1999年爆誕
桃太郎
センタービル
4F ホールA C404
パフォーマンス: 24日(土)
16:00-16:30 / 25日(日) 16:00-16:30
「桃太郎」は、モーションキャプチャーで記録した「動き」と、それを基にした自己のアバター、AR技術、さらに私自身の物理現実の肉体を使用して行われます。作品のタイトルは「桃太郎」。これは、日本の伝統的な童話を基にしながらも、テクノロジーと肉体を駆使した全く異なる解釈で描いています。今回のパフォーマンスでは、桃太郎の物語の一部分、すなわち彼らが鬼ヶ島に到着し、鬼を討伐するシーンを基に、オリジナルの脚色を施した物語が展開されます。このパフォーマンスでは、桃太郎、キジ、サル、イヌといった役どころは、私のアバター、およびその動きの再生を通じて表現されます。一方、鬼の役は私自身の物理現実の肉体を用いて、物語に沿ってリアルタイムに演じられます。
重なり合う光の彩の間にいる
センタービル
3F ビジュアルスタジオ C305
——自然の秩序が織りなす無始無終の円環と対峙し、"身体と取り巻くものとの関係の表れ"として色彩を経験する——
『重なり合う光の彩の間にいる』は孔雀の羽根を色域ごとに分解し、同心円状に配置した彫刻的なインスタレーションです。
目の模様のある上尾筒という孔雀の羽から個々に分解された羽枝は、長さや色彩のグラデーションなど、自然に作り出された規則性を持ちます。また、孔雀の羽は、特別な発色構造を持っており、わたしたちの視点や、光の色や角度などの空間的な関係性によって、目に見える色彩が変化します。円盤は無反射性塗料で塗装され、光を吸収する素材と、光を反射することで発色する羽枝との視覚的、物質的な対照を作り出すことで、色彩の同心円から独特なリズムが浮かびあがります。
この作品では、色彩を”静的な物質の属性”としてではなく、”身体と環境の相互作用によって生じる経験のプロセス”であることを表します。
修士2年
石塚 隆 ISHIZUKA Ryu
TimeControl
ワークショップ24
5F プロジェクトスペース W508
本作「TimeControl」は仮想空間内を自由に歩き回り、自身の視線や歩行などの身体動作によって時間の速度と向きを操作する"時間操作体験VRコンテンツ"です。これまでの映像鑑賞では時間の流れの変化を理解するだけの傍観者としての域を出ていませんでした。修士研究ではインタラクティブな操作による没入度の高い体験を提案し、時間の流れの変化を直感的に感じられ、時間操作体験という行為自体を目的とするコンテンツの設計を目指しました。海外の街を参考に構築された仮想空間では、時間の操作によってスローモーションになったり、時間が巻き戻ったりします。そうした現実では起きえない不思議な現象を観察し、時間の流れの変化を感じられる新たな体験を提供します。
修士2年
今尾 秀飛 IMAO Shuto
名古屋造形大学でプロダクトデザインを学ぶ。その後IAMASに進学する。体験を中心とした面白いことを探究したい。最近は、本気で時間が止まって欲しいと思っている。
自転車生命体Cycloborg
センタービル
3F 展示準備室 C313
「自転車生命体Cycloborg」は母胎を模したシステムを搭載する母なる自転車と人間が共生するサイボーグの創造を通じて、高度テクノロジー社会で求められる新しい倫理観や技術観を探究するプロジェクトです。
修士2年
河合 将也 KAWAI Masaya
愛知県田原市出身。多摩美術大学 環境デザイン学科卒業後 、IAMAS に進学。エンジニアリングの力を借りた思索的な装置の制作に取り組んでいる。
BMX Graffiti
ワークショップ24
5F 多目的室 W504
BMX Graffitiは、ストリート?カルチャーと芸術的な創作活動が交錯する場に位置する研究です。この研究は、都市環境における創造性の可能性を探求し、新たな芸術的手法を開拓することを目指しました。BMXという動的な要素を取り入れることで、従来のグラフィティ?アートにはない独自性とダイナミズムを創出しようと試みました。BMXとグラフィティの組み合わせにより、アクションと視覚表現の新たな形式を創出し、都市空間をダイナミックでインタラクティブなキャンバスに変える試みです。BMXの動的な要素とグラフィティの静的な要素を融合させ、都市空間をキャンバスとして活用することで、場所ごとに異なる芸術的表現を生み出します。 BMXとグラフィティの両方の文化的背景を取り入れ、都市空間内での新しい表現方法を提示することにより、ストリート?カルチャーの背景や表現方法を共有し、互いの長所を引き出しながら行いました。
Informalized Void
ワークショップ24
5F プロジェクトスペース W508
これは、見えない物体を追いかけるように指差しを行うロボット群からなる作品です。物理的には何も存在していない空間に対して、ロボットたちが「あたかもそこに何かがあるように」指差しを続けています。私たちは肉眼ではその対象を見ることはできませんが、「指差しを続けるロボットたちの動き」を通してそこにいるはずの何かの動きや位置に加え、重さや軽さ、そこにいるはずのなにかの意思など、様々なことを感じ取ることができます。
最近ではARのように、情報をモニターの中にとどまらず、現実の空間の中にも出現させるような技術が多数登場しています。この作品で「指差しを続けるロボットたちの動き」から感じることができる「そこにいるはずの何かの様子」も、画面を飛び出した「情報」のあり方の一つだと言えるでしょう。これから先、私たちと「情報」の関わり方はどのように変容していくのでしょうか?
修士2年
竹澤 風太 TAKEZAWA Futa
これはかけ算ではない
センタービル
3F ギャラリー1 C311
デジタル数字を模したコントローラーとディスプレイを介して学習済のニューラルネットワークとリアルタイムにインタラクションを行うアート作品です。ニューラルネットワークは事前に学習した結果に基づいて、鑑賞者の入力に対して推論?生成を行い、その結果をディスプレイに表示します。デジタル数字のように見える何かを鑑賞者自ら破壊し、また再構成する一連の連続的な操作によって、ニューラルネットワークの潜在空間の振る舞いを観察することができます。その時、鑑賞者はニューラルネットワークに対してメディウム?スペシフィシティを感じるだけでなく、デジタル数字という記号の意味内容が脱臼し溶解するような経験をするでしょう。なぜならば、「これはかけ算ではない」からです。
修士2年
津曲 洸太 TSUMAGARI Kota
名古屋学芸大学映像メディア学科卒。メディア装置としてのAIという観点から、ニューラルネットワークを用いたアート表現を探求する。
環 -うごめく二十景-
センタービル
2F 女子仮眠室 C213
《環 ?うごめく二十景?》は大型ディスプレイでの鑑賞を前提とした展示型の映像作品です。本作は、作者が考案した〈動きのコラージュ〉という方針を軸に制作を行っています。〈動きのコラージュ〉とは、映像のコラージュにおける要素の〈運動と展開〉に着目し、作者の過去作の分析から作成した〈運動と展開の分類〉を用いて取り組む作品制作です。映像は作者によるフォト?コラージュをベースとしており、画面内の各要素がループの中で微小な動きを繰り返し、それらが徐々に大きな展開へと繋がっていく構成になっています。また、本作は大型ディスプレイで鑑賞することを前提に、4K解像度で映像制作を行っています。高解像度画面に多くの要素を配置することで、そこから発生する動きや展開を、より多様なものにすることを試みました。
本作では、こうした作品制作によって〈動き〉の観点から映像のコラージュの新たな可能性を見出すことを目指しています。
修士2年
西尾 秋乃 NISHIO Akino
大学で映像、インスタレーションなどを学んだ後、IAMASへ進学。
作者自身が撮影した写真素材のコラージュを用いた映像作品の制作を行う。現在は、映像におけるコラージュの動きと展開の部分に着目し〈動きのコラージュ
〉としての作品制作の可能性を探っている。
配信における双方向性と他者の存在が落語に与える影響 [論文]
センタービル
4F ロビー 論文展示ブース
COVID-19の蔓延によって実施された配信落語の多くは一体感や迫力に欠け、演者にとっても鑑賞者の反応がわからないため、口演しづらいという課題がありました。これは、本来の落語には欠かせない演者?鑑賞者間の双方向のメタ?コミュニケーションと鑑賞者同士の無意識的な情動感染が欠けていたためと考えられます。修士作品〈Augmented Rakugo〉は鑑賞者の表情解析から触覚/視覚/聴覚のフィードバックを作り、離れた場所にいる人同士でも、これらのコミュニケーションの構築する配信落語システムです。演者と鑑賞者双方向の配信落語体験を向上させることを研究の目的として作品制作と実験を行い、生成されたフィードバックによって一定の効果を得ることに成功しました。
修士2年
樋口 聡一郎 HIGUCHI Soichiro
1996年、福岡市生まれ。長崎大学工学部情報工学システムコース卒。演劇?落語の経験から、配信における演者?鑑賞者のコミュニケーションに関する研究を行う。
metarium
センタービル
2F 男子仮眠室 C211
水槽の中で独りでに動く金属の液体。時には荒々しく尖り、時には柔らかく、丸み帯びて可愛らしい。本来、自然には与えられなかった磁気の力を後天的に宿した液体の金属は、独自の物理秩序を作り出し、新しい動きの輪郭を描き出します。一見すると不自然で均一な自律運動、けれども、どこか自然のリズムを感じる流麗で繊細な振る舞い。そこには、新しい自然として生まれた素材の美しさと人工秩序による未知の自然情景があるのかもしれません。まだ誰も見つけられなかった動きの情景が、そこにはあります。
地方創生関連事業における集合的創造性の研究 ?アクターネットワークと共話に着目して? [論文]
センタービル
4F ロビー 論文展示ブース
つぶさにアクターの連関を追い、分析していくことで、「偶発はいかに生まれていったのか」、その偶発により生まれた場において、アイデアの創出や変容に寄与するような、「発酵はいかに促されていったのか」について明らかにしました。既存の繋がりがない人たちと地域の文化や社会の非人間アクターがつながっていく場ができることで、そこに創発の場が生まれアイデアが生まれていく。地域の人だけでなく、非人間というアクターが人を繋げ、場を作る上で重要でした。
本研究で行った3つの単位での記録と、分析の着眼点として4つの間(あわい)の可能性を検討し、今後、地方創生関連の事業において、地域固有の集合的創造の場について評価していくことは、様々な記録や報告書等を活用していくことで可能なことを提示しました。
修士2年
堀江 洋生 HORIE Hiroki
青森市出身。商社、インキュベーターを経て独立。人が繋がり、新しい集合体が生まれ、そこからさまざまな取り組みが創造されていくコミュニケーションの過程に関心を持つ。
プレイング知らん人たち [論文]
センタービル
4F ロビー 論文展示ブース
私たちの生活とは全く関係なしに、単に「探されている対象」から、私たちに眼差しを送り続ける存在として肯定的に捉えること。その静止した地点からの眼差しは、近代以降の社会で忙しなく動き続ける私たちが、どこに向かっているのかを静かに問いただしているような気がします。そこでは、私たちの行方が不明ではないと言い切れない。「探すー探される」関係から「鏡像的」な関係へ。私たちこそが行方不明者である可能性を問いただす眼差しが、掲示板には潜在しているのではないでしょうか。修士作品では、こうした内容を表現するためにさまざまなメディアを使用し、映像作品『プレイング知らん人たち』を制作しました。
Observing Variation
センタービル
3F ギャラリー1 C311
日常生活の中で、同様の色、同様のカタチをした同一に見えるモノが数多く存在しています。特に工業製品は精密に作られており、そのため隙がなく遊びがないようにみえることがあります。しかし、その1つ1つに触れてよく観察すると、肌理に微かな違いや特徴があることに気づきます。それは個々それぞれに固有の特徴が存在し、同一にみえても本質的には異なる似て非なるモノであることを教えてくれます。このような厳密な(工業製品の)世界にも遊びが存在し、一見地味に見えますが、ほのかな彩りを生む微かな差異への関心を膨らませた研究の展示です。
本展示は、
同一に見えるモノの中でも加工食肉に着目し、既存の4入り「スライスロースハム」をモチーフに映像と音響を用いて制作した作品群です。スライスロースハムは、均一な製造加工プロセスを経て、
正円に近いカタチをした匿名的なモノとして人々の食生活に溶け込んでいます。この均質化されたスライスロースハムに潜在する多様な差異を“生物の痕跡”や“加工の痕跡”とし、オーディオビジュアルインスタレーション作品で表現し、顕在化させました。
ある/いる
センタービル
3F ギャラリー2 C312
人体を物体として見た時、あらゆる振る舞いが生む人体の力学構造は美しいのではないでしょうか。人体を単なる力学構造として現前させるために、角材やボルト、ワイヤーで抽象化した構造体としての人体を作成します。そこへ、ある振る舞いを示唆する人体の映像を投影することで、人体はリアルなマテリアルとしての存在と、虚構性へ誘う存在との間を行き来します。複数の構造体と映像による振る舞いの集積により、空間からはある人間性が浮かび上がります。
本作は構造体と周囲の物体との接点に手足の映像を投影することで、摩擦や重力に目を向けさせることを試みています。構造体を構成する物体と投影映像の素材である光の関係に着目し、物体と映像の2つの情報の相互作用が鑑賞体験に影響を及ぼします。
修士2年
門田 健嗣 MONDEN Kenji
Grasp(er)
ワークショップ24
5F プロジェクトスペース W508
意識的になりながら折り合いをつけていく「人馬一体感」はどのように生まれるのか?手指を変換される表現を通して、目指したデザインリサーチの実践作品です。次々と形を変えていく手指の感覚に注意を向けていくと、通じ合ったような感覚が芽生えることを目指します。
作品では、手の形が大きく変化していく中、注意を向けながら手指を動かしていると、ぴたりと歩幅が合うように身体を動かすことの気持ちよさを見つける瞬間があります。最初はうまくいかず、もどかしさを感じることもありますが、その「もどかしさ」を経て何かを「手放し
/
つかむ」、“grasp”をキーワードに作品制作しました。こうした作品制作から、「自己帰属」ではない、自己と他者の相互作用を経て一体となるような感覚についてのデザインの可能性について取り組みました。
修士2年
山岸 奏大 YAMAGISHI Kanata
code play/码上演绎
本作は日常的な行為であるSNSの使用が、自己のアイデンティティーに与える影響をテーマにしながら、スマートフォンを使って体験するサイト形式の演劇です。サイトにアクセスすることで、参加者はフィクショナルながらリアリティを帯びた演劇的な体験を自らの生活に織り交ぜ、自身のSNSを使用する日常的な行為を振り返ります。
修士2年
楊 慶新 YANG Qingxin
中国から来ました。大学から演劇をしていました。そしてなんで演劇をしていたのか考えるようになりました。そしてわたしが生きるということと向き合いたかったからだと思うようになりました。好きな食べ物はポテトサラダです!
カードゲームで学ぶ-里山
ワークショップ24
5F 会議室R W502
ワークショップ:
23日(金) 17:30-18:30
カードゲームの形式を通じて、参加者の自然問題に対する思考を導き、同時にカード間の関連性は参加者にこれらの問題が孤立しているのではなく、相互に関連し、相互に影響を与えていることを教育することができる。最終的には里山から自然全体に目を広げ、参加者の思考次元を広げる。
ワークショップは、導入部分、教育部分、ゲーム部分、結果分析部分で構成され、ゲームは主に物理的なカードとコンピューター上のゲームシステムで構成された。ファシリテーターは、参加者が知識を学ぶと同時にゲームを体験できるように導く。参加者同士が協力し、話し合いながら【問題カード】を解き、【方法カード】を使って、里山全体のレベルを少しでも上げていく。
修士2年
林 晨 LIN Chen
中国福建省出身。大学でデジタルメディアアートを学び、20年12月に来日。インタラクティブ?アートが専門で、インスタレーションやゲームがお気に入り。
〈聴くこと〉の政治と倫理を問うポストコロニアルの作曲実践:《その時代その場所における不透明性の中で聴く》の創作と検証から [論文]
センタービル
4F ロビー 論文展示ブース
筆者はこれまで20年に渡って、コンテクストとの親密で不可分な関係において体験される「コトとしての音楽」を、一時的な共同体による「集団的な創作」を通して実現し、「聴く」という振る舞いを通して世界の意味を生成していくような「パフォーマティヴな聴取」を促す作曲を追求してきました。その中で、抗いようのない植民地支配の歴史が立ち開かり、時間を固定して音をコンテクストから引き離してしまう「録音と再生のテクノロジー」の使用をめぐる課題に直面しました。「聴くこと」に介在するメディア?テクノロジーの多義的な性質と影響を注意深く検討し、作曲の権力を引き受けながらも、美的かつ倫理的に他者と出会い、ともに「声」を「聴く」ための技術=芸術として創作したのが、修士作品《その時代その場所における不透明性の中で聴く》です。本論文は、この取り組みの意義を同時代的な言説との関連から考察し、音本来のエージェンシーを尊重するポストコロニアルの作曲実践に向けて一つの可能性を提示するものです。
(Photo by Rosie Hastie)
修士2年
樅山 智子 MOMIYAMA Tomoko
作曲家/通訳家
世界の各地で人と環境の関係性を問うサイト?スペシフィックなプロジェクトを展開。周縁化された存在や異分野の専門家等と協働し、対話を媒介しながら複数の物語を紡ぎ合わせることで、非人間中心主義的なパラダイムから世界を聴くための新たな共同体の音楽を探求する。