Interaction 95
1999.09.01
ジャン=ルイ・ボワシエ
ローラン1945年生まれ。パリ第8大学教授。インタラクティビティの美学と工学研究所所長。ポンピドゥー・センターの「レヴュー・ヴァーチュエル」展やサンドニのビエンナーレ「アーティフィス」展のキュレーター。インタラクティビティやヴァーチュアリティーのイメージとアートへの美学的影響に、作家、研究者として関心を持つ。

主なインタラクティブ・アートの作品として、「バス」(1985年)、「北京・想い出のために」(1986年)、「目玉」(1992年)、「押し花」(1993年)、「アルバム」(1995年)、「タブララサ(鉛筆)」(1995年)などがある。


必要なら変更を加えて
成長する植物この作品はコンピュータによる対話型のインスタレーションで、デジタル化したビデオ映像と音で構成したハイパーメディアの作品です。詩や哲学的なテーマを扱っていますが、この作品のインタラクティブな文体の可能性を探るのが狙いです。タイトルはフランス語や英語でよく使われる〈細部に必要な変更を加えて〉という意味のラテン語です。それは、比較をするためにはその比較に無関係な部分を無視しなくてはならないという一種のパラドックスを強調したものです。画面には二枚続きの映像が並び同じ事物の二つの状態が示されています。カーソル(矢印)を一方から他方に動かすと、その変化の動きを見ることができます。画面の外へカーソルを移動すると二枚とも新しい画像に変わります。イメージの対象は、特別な場所や状況を撮影した風変わりなものだけでなく、ごく日常的な風景や自然のように平凡なものも含んでいます。画面を観察している間は、そんな対象物から特別なテーマを引き出せるわけではありません。あったとしても、せいぜいその内部の変化を示すだけのものです。観客がこの画面の変化を引起したり、繰り返したりすると、同時に画面の余白に見えるコード番号が変化して、いまどの二枚続きの画面を見ているかが分かります。映像の順序にはそれぞれの分類を示すコード番号がついているからです。そういった理由で、この作品の観客は、二つの選択をすることができます。一つはこれらの変化の類型のなかに存在する論理を発見し、理解するという方法です。もう一つは、説明や分類には還元できない複雑な現実のなかの単純な断片を、一定の距離を置いて、注意深く観察していくというやり方です。


Interaction 95 >>

E-Mail : info@iamas.ac.jp