「またりやま」は、逆シュミレーション音楽である。逆シュミレーション音楽とは、ある規則を設定し、その規則に従って演奏したらどうなるかという作曲、演奏システムをモデリングする音楽である。そして、コンピューター・プログラムを用いて、その規則を模擬実験する。テクノ・アンサンブルチームは、 それが音楽になるか、ならないかではなく、規則にそっての「演奏」を想定するシステムを最も重要視する。また、演奏する5人の演奏者たちは、一般的に言われているところの「演奏家」としての経歴は持っていない。そういった5人が、そのように作られた規則に従って演奏する。
この作品の特徴として、「楽譜が存在しない」ということがあげられる。演奏者は演奏する順番や自分の演奏パターンを規則を記憶し、その規則を守ることが「またりやま」の演奏となる。すなわち、楽譜を読めない、音楽経験のない者でも規則にさえ従えば、誰でも演奏できるのである。しかし、誰にでもできる演奏だからこそ、次に要求されるものがある。誰にでもできる演奏を、誰もできないレベルの演奏までにしなければならないことだ。演奏者として選出された者たちは、そのために特殊な練習を毎日行った。
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