粒光
2021年11月24日から12月26日まで、アキバタマビ21にて展覧会「粒光」が開催されます。この展覧会の企画代表及び出展者に修士2年の林暢彦さんが参加します。関連イベントとして、パフォーマンス+トークに小林昌廣教授がゲストで登壇します。
「粒光」とは、本展覧会出展者の一人、成清祐太がアキバタマビをおとずれたときに偶然思いついた言葉です。その言葉が含みもつものは、瞬間的なひらめき、万物を構成する声と文字の手触り、関係性の網の目、「ながれゆくもの」などです。
この言葉は私たちに「インドラの網」を思い起こさせます。インドラ(帝釈天)の宮殿にかけられた網には無数の宝珠が輝き、ひとつひとつの宝珠に、他のすべての宝珠がうつしだされているといいます。それはあらゆる存在が他を含み、宇宙を内包している世界の姿です。
しかし、そうでありながら、私たちはそれぞれに異なった存在です。つながりを持ちうる可能性を帯びた個別なものたちです。「粒光」とは、インドラの宮殿の宝珠と宝珠の間を飛び交う、個々の光の粒子なのでしょうか。
本展覧会では、この「粒光」という言葉を軸に、ジャンルの異なる5人の表現者が作品を発表します。
瞬間的なコマとコマの間に、反転し滲み出る身体器官に、人間と動物の知覚に、自分が生まれる前の世界に、聴こえくる声と声の間に──個々の表現者は、それぞれ独特の、個別で有限な「つながり」の可能性を持ち寄ります。それらの「つながり」の点と軌跡の布置から、不協和音に満ちた、世界に対する異なる眺望が描き出されます。
この5人の共通点は、これまで様々な領域──必ずしもアートの領域とは限らない──をさまよってきた「半端者」である、ということかもしれません。この割り切れない人々の、分からなさに対する孤独で知的な関心が、「粒光」の核にあるといえるでしょう。
あまりにも「現在」を意識せざるを得ないような現在に、今でない今、ここではないここ、私でない私(あるいは誰か)をどのように想像することができるのか?企画代表 林暢彦