インタラクティブな映像と音響を統合したパフォーマンス・システムの開発
及び作品、ドキュメントの制作 |
プロジェクトの背景:近年のネットワーク社会において、舞台芸術と呼ばれる様々な形式のパフォーミングアートは、パッケージメディアやストリーミング放送などをはじめとする「いつ、どこででも体験できる」新しい表現形式の誕生によって脅かされるのではないかという考え方があった。しかし現代のパフォーミングアートは、むしろこれらの新しいメディアによって今まで問われることのなかった情報と体験というふたつの要素を巡って二極化していく傾向にあると考えられる。 それは一方でMP3などをはじめとする様々な音楽や映像情報の流通や双方向放送などネットワークならではの時空を「越えて」誰もが様々な形式の情報コンテンツを享受する方向へと進み、もう一方では、その場所に足を運び自らの身体と共に同じ時空の「中で」体験することに大きな価値を置く表現形式へと進んでいるのである。現代人は高画質の映像や最高品質の音楽を自宅で享受する一方で、やはり映画館に行きコンサートに足を運ぶのである。 このプロジェクトの目的の第一は、この、人々がある時空の「中で」体験する作品鑑賞の形式を問い直し、テクノロジーが支配する社会において、音や映像というジャンルを越えた新しい形のパフォーミング・アートの可能性を探求することにある。さらにそれらを記録、記述すること、一回限りの体験の総体をいかに形としてとどめ視覚化するかを考え、それらが様々な形態のメディアの中でどのように成立するのかを探ることが、このプロジェクトの第二の目的となる。 |
このプロジェクトは技術的なアプローチに加え、芸術創造を含めた美学的なアプローチというふたつの不可分かつ重要な柱を持つことになる。それらはまず、技術面においては、 - パフォーマーが操る音響及び映像システムの開発 - パフォーマーとシステムを結ぶインターフェースの開発 という、基本的かつ作品制作の要となるソフトウェア及びハードウェアを含むパフォーマンス・システムの開発が中心となる。これらはこのプロジェクトの性格から、すべてリアルタイムで動作するデジタル音響及び画像処理アルゴリズムによって実現されるだろう。ただし、最新のテクノロジーを駆使するものとはいえ、ここで開発されるソフトウェア群は学術的な新しさを追求するものではなく、あくまでも新しい表現形態としてのパフォーマンスにおける可能性を拡張するものとして、パフォーマンス作品においてシステムがどれほど使いやすく直感的に理解しやすいものであり得るかを探求することが主たる目標になる。 また、それらの成果物が実際にパフォーマンスとして本当に魅力的で、人々が芸術やエンターテイメントに求める何かを満たすことができたのかは、実際に作品制作を通して検証を重ねそれらの行為の意味、それらを成り立たせている概念そのものを見直していくことが不可欠である。例えばシステムがパフォーマーとどのような関係にあり、どのようにその場を活性化していくのか、そしてそれらがどのように聴衆に伝わり、聴衆によってその場がどのように変化していくのか等を考察し、システムの開発に還元していくこと、つまり現在まで伝統的な形式の上で個々のアーティストやパフォーマーの経験や才能、つまり「芸」としてしか捉えられていなかった事象に対してここでは「パフォーマンスを科学する」態度をもって第二の柱である「美学的なアプローチ」の研究を行うことになる。さらにこのプロジェクトで制作されたパフォーマンス作品の視覚化(記録、記述を含む)は、前述のように、芸術やエンターテイメントとの関わり合いにおける表裏一体の関係にあるネット上のコンテンツやパッケージ化された媒体として(再)制作され、このプロジェクトの成果として残されていくことになる。(文責・三輪) |
2000年度活動
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2001年度活動
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2002年度活動
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2003年度活動
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